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3回観ましたセヴィリアの理髪師 METライブビューイング

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セヴィリアの理髪師 METライブビューイング
1回目 2025年7月12日(土) 大阪ステーションシティシネマ(ほぼ満席)
感想
2回目 2025年7月15日(火) 大阪ステーションシティシネマ(6割くらい)
3回目 2025年7月16日(水) MOVIX京都(4割くらい)

3回も観に行ったのは、ご贔屓歌手が出ているからに他ならないのですが、これまでこの名作と殆ど向き合って来なかった身としては、やっと身体に音楽を落とし込めたかな…という感触を得られて嬉しく思います。

演出はドタバタ、アメリカンコメディの典型的な形で、大袈裟な演技もあり、随所でMETのお客さんはドッと笑ったりして、愉快な喜劇として収まっています。変な読み替えもしていませんし、かれこれ20年近くかかっている演出ですから。

いくらご贔屓さんが出ているからと言っても、メインではありませんし(怪しくて重要な役だけどね!)飽きずに3回通えたのは、他のキャストが高水準で、完成度が高い演奏だったからに他なりません。

目次

アイグル・アクメトチナ

最初の感想では、ロジーナを歌っているアイグル・アクメトチナが、気の強すぎる^^;役作りと歌唱で、もう少し楚々としている方が役として適切なのでは…と思っていましたが、2度3度と見るにつれ、だんだん彼女の強くて芳醇な声に、こちらが慣れてきました。なんと言っても、装飾技巧も高く、上から下までムラなく鳴る迫力に飲み込まれました。2幕のお歌のレッスンのアリアでの高音!ビンビン響いて、もし実演で聴いていたらと思うとゾクゾクします。

「カルメンを歌う為に生まれてきたような歌手」という類のキャッチフレーズは、若いメゾにはしばしば与えられます。なので正直なところ、あまり期待していなかったのですが、彼女は確かに特別な声と高い技術、そして優れた演劇的センスの持ち主であり、今、聴いておくべきメゾだと思います。正統派美人ではないですけど、コメディエンヌとしてのセンス抜群で、表情も豊かで惹き込まれました。
もし昨年のライブビューイング「カルメン」のアンコール上映があったら、行きたいです。

SNSで「(後日譚の)「フィガロの結婚」のスザンナは、若い頃のロジーナに似ていたんだろうな(=だから伯爵がスザンナにちょっかいをかける)」というのを目にしましたが、彼女のロジーナを見ていると、確かにそうだ!そうだよねぇという感じ。それこそメゾなのであり得ませんが、勝ち気な彼女のスザンナも見てみたい…と思いました。

女性歌手でもう一人、女中のベルタを歌っていた Kathleen O’Maraが、歌も上手いし(くしゃみもw)納得の大喝采でした。ザ・ソプラノという可愛らしい声で、アンサンブルでのロジーナとの対比がよくついていたと思います。

この演出がライブビューイングにかかるのは2007年プレミエのシーズン、2014年に引き続き、3回目です。過去2回の映像を流し見して色々検証?!しました。

アンドレイ・ジリカウスキ

そのことにより、今回フィガロを歌ったアンドレイ・ジリカウスキは決して、ネームバリューの高い過去のフィガロたちであるペーター・マッティやクリストファー・マルトマンと遜色のないフィガロなのだ…と思いました。最初はもっと弾けた方がいいんじゃない?と思ってましたが、よく見ると演技も体当たりで(しかもそれが「やってます」という感じではなく、実に自然)小技も効かせてます。
歌もあれだけ動いてブレない歌唱技術は決して侮れないな、と思います。

ジャック・スワンソン

何度見ても面差しが若い頃のヴィノグラドフに似てるので(友達に言っても「そぉ?!」って言われるけど、似てるのー!)
特に2幕のドン・アロンゾに扮してバジリオにバッタリ出会うところはケッサク^^

見た目の華もあるので、もう少し歌の緩急がつけられるようになると、もっといいんじゃないかと思います。甘いマスクの中にも、伯爵の傲慢さが垣間見えるところが感じられるし、ただの甘ちゃんじゃないところが良き良き。

バルトロのピーター・カルマンが◎

憎々しい役作りではなく、地位も名誉もある後見人(ロジーナの財産目当てとはいえ、彼も町の名士であることは間違い無いでしょう)である大人紳士?!(ちょっと変だけど^^;)な立ち居振る舞いがギトギトしてなくて、そこがツボでした。

今回、唯一残念だったのは
バルトロとバジリオにインタビューがなかったこと(←まだ言ってる、一生言うと思う)
これがネット上で二人に言及する感想がほぼ皆無だったとも思うんだよね。
この二人がバシッと(歌的にも演劇的にも)決めてたからこそ、若い3人がより引き立ったと思うんだけどなぁ。

バス歌手のインタビューは、地声と歌声のギャップを一般の方々にも知らしめる大変良い機会ですから(⬅️?)
やって欲しかったなぁ。ジリカウスキと指揮者へのインタビューは別撮りだったじゃん?それでいいから、とにかくやって欲しかったわ。

で、アレクサンダー・ヴィノグラドフのバジリオ

過去2回の映像では、1回目が若き日のジョン・レリエー、2回目がベテランのパータ・ブルチュラーゼがバジリオを歌ってます。
どちらも私好みの歌手さんで、それぞれ味わい深い役作りです。レリエーは若さもあるんでしょうが怪人っぽい役作りで、いつも無一文で金に目がくらむタイプには見えないことが特徴かも。
ブルチュラーゼは鷹揚な役作り+豊かな声で圧倒、演技を観るより声を楽しむ感じかな。

アレクサンダー・ヴィノグラドフは、昔から小芝居が上手かった特性を見事に役に結びつけたな…と思いました。いい感じに貫禄もついて、愛嬌たっぷり。
いいんじゃない?!(笑)

誰も指摘して下さいませんでしたけど、私は最初に見た時から、彼の怪しい指捌きが気になって仕方ありませんでした。よくまあ、あんなことしながらきちっと歌えるもんだと。

バジリオは若い時にはベルリン国立歌劇場のポスターにも登場していたほど、よく歌ってました(当時、用もないのにあの周辺を毎日彷徨いた記憶が…^^;)
2回目に同伴した友人は、ベルリンで何度もヴィノグラドフ・バジリオを観ていますが、もっと気持ち悪い役作りだったとか(あれ以上って、どんなの…^^;)

1回目に同伴した友人が
「バジリオの登場シーンで、お辞儀しながら両手を横に広げてたじゃない?あのポーズを見て、なんか体幹しっかりしてるなぁ〜と思った」
と言ってましたが、それは確かにその通りで、基本的な立ち方とか、指先に至るまでの仕草が綺麗なんですよ。丹田に力が入った立ち居振る舞いとでも言うか…

その直後の、あのヘンテコな帽子を取ってスッスッと埃を払う仕草。指先まで神経が行き届いているからこそ、可笑しく見えるのです。

それと2幕で(誰も呼んでないのに)
「皆さんのお役に立ちたくて参りました」
…って(^^;;
ここんとこの空気の読めなさが、最高に可笑しくて愛しかったわ❤️

大西宇宙さんが今回、作品へのコメントとして
「ヴィノグラードフのエレガントかつコミカルな歌唱も光ります」
と仰って下さいましたけど、あんなトンチキな役でも可笑しく見えるのは、彼の立ち居振る舞いがエレガントだから。さすが、うまく仰ってくださったと嬉しく思いました。

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映像収録したお陰で彼の小芝居と顔芸が映える結果となったけど、あれは普段の舞台でも彼が常にしていることであり、決して映像収録の為の演技ではありません。彼は決してバス歌手としては体格が大きくありませんが、METで歌うようになった2018年ごろからは、声量もマシマシで低音もよく響くようになりましたし(昔は蚊蜻蛉みたいって言われていたのよ!)
歌の面でもほぼ満点だったんじゃないかな?と思います。

バジリオはシリアスな役が多いバスとしては珍しいコミカルな役ですけど、私も彼の表情や表現に「えぐられる」ような感覚とは全く無縁で、ひたすら笑いをかみこらえながら「おっかしー!!」と屈託なく言えるこの役の良さを、改めて享受しました。良い映像収録ができて良かったと心から思います。

ヴィノグラドフは来シーズンのMETライブビューイング、新演出の「夢遊病の女」にも出演します。10月18日の収録、日本での公開は11月21日(金)~11月27日(木)となります。

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また3回行く気ではいますが…ベルカント克服できるかな(^^;;

****************

アルマヴィーヴァ伯爵:ジャック・スワンソン(METデビュー!)
ロジーナ:アイグル・アクメトチナ
フィガロ:アンドレイ・ジリカウスキ(METデビュー!)
バルトロ:ピーター・カルマン(METデビュー!)
ドン・バジリオ:アレクサンダー・ヴィノグラドフ

ついでに指揮者のジャコモ・サグリパンティもMETデビュー!

可笑しくて愛おしいバジリオ様の「悪口ソング」は👇

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この記事を書いた人

通称ヴァラリン。モットーは【チャーミングなオトナのオンナ】

還暦の足音が聞こえ始めた主婦です。
オットの定年退職を機に、2017年10月に神奈川県から奈良と京都の県境にお引っ越しして8年目。
老母のゆる介護をしながら2024.10-2025.4近畿大学科目等履修生として、司書資格取得しました。

ロシア人バス歌手アレクサンダー・ヴィノグラードフのファンサイトも運営中:) そちらもよろしくお願いします。
詳しくはこちら

A great fan of Russian Bass Singer Alexander Vinogradov & a webmaster of his fansite :)

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