総評:★★★★★ 行って大満足
写真は小澤征爾音楽塾/SeijiOzawaMusicAcademy より。
2025年3月14日、思い立って小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXXI、ヴェルディの歌劇「椿姫」をロームシアター京都にて当日券で鑑賞してまいりました。結論から申し上げますと、心から行って良かった!同行した夫も「こういうことがあるから実演には足を運ばないとなぁ」と深く頷いていました。
「椿姫」は椿姫(ヴィオレッタ)のオペラであり、いわゆるプリマドンナオペラの代名詞と言っても過言ではない故、それを歌う歌手次第で上演の出来が決まる、という固定観念はフラットにして臨むべし!です。
共演者、オケ、演出、美術、全てにおいて丁寧に音楽が紡がれると、流石に名作であり、生の舞台で「見る聴く」意義があると心から実感しました。
聴くべきバリトン、クイン・ケルシーのジェルモンに注目
この公演に興味を持ったのは、現在活躍している旬の、聴いておくべきバリトンであるクイン・ケルシーがジェルモンを歌うからでした。
しかし主役カップル始め、脇役も隙なく◎
椿姫という作品自体、特に好きというわけではありませんでしたが、本当に、心の深いところに染み入るような名演だったと思います。足を運ぶきっかけとなったケルシーには、本当に感謝してもし尽くせない思いです。
冒頭の序曲からオケが雄弁で引き込まれました。最後まで弛緩することなく、演出もオーソドックスながらも色彩、装置が美しくて。
この時点で既に、寧ろ昨年の「コジ」より完成度は高いかも。。。。と感じました。

アルフレード役カン・ワンの歌声に驚き!
1幕からフルスロットルで飛ばしてて、この役の育ちの良さに垣間見えるアマちゃんなとこやら、若さ故に無力感を感じる、どうしようもない感とかがビシビシ伝わってきました。

いい意味で東洋系のイケメン、すらっとした見た目もこの役にピッタリ。
現在は来年METでも歌うことが先日発表された同役アルフレードや、ボエームのロドルフォが当たり役とのことですが、何より、テノールに不可欠な華が感じられて、まだまだ伸び代があると思います。
高音域に煌めきがあって、スタミナも充分感じられたので、ゆくゆくはマンリーコやカラフ等のスピント系も行けそう。今後注目していきたいです。今回の公演が終わったら、ワシントンで「ルイザ・ミラー」のロドルフォを歌うそうですが、いいと思う!!!
ヴィオレッタ役ニーナ・ミナシアンの情感豊かな歌声
プロフ写真を見る限りでは、ブロンドスレンダー系の見た目で、声はキンキン系かなぁ。。。と危惧していたけど、
表現には情感が籠っており、アルフレードとのカップリングも息が合っててストレスを感じませんでした。

1幕のドレスの裾捌きに、少しもたつきがあったのが気になりましたけど、アルフレードやジェルモン、絡みの多い医師グランヴィルとのコンビネーションも◎
椿姫は痩せている方がそれっぽい…という意見もありますが、私はこの、ミナシアンくらいの体格がちょうどいいように感じました。椿姫だからか髪も黒色、歌も一生懸命で節々で情感がこもっており、非常に好感が持てました。
終幕の絶命場面での、アルフレードとの絡みには思わずじわっと。。。😭
圧巻のジェルモン!クイン・ケルシーの「役不足」な才能
ジェルモンのクイン・ケルシー(Quinn Kelsey)は今聞いておくべきバリトンの1人。
2018年にMETのルチアの放送で私のご贔屓歌手であるアレクサンドル・ヴィノグラードフと共演し、エンリーコを歌っていたのに耳を奪われて以来、一度実演を聴きたいと思っていました。ようやく実演を聴くことが叶い、大満足です。

本来の意味の「役不足」で圧巻。素晴らしかったです👍
ジェルモンは日本語の字幕を見ながら聴いてると、本当に腹立たしい偽善者で、ツッコミ所満載。
役柄的にケルシーの声の枠には収まりきれない気がするけど、なんせ有名なプロヴァンスのアリアは旋律が美しくて。オケもここは一番の聴かせどころだと言わんばかりにゆったり歌わせてましたが、たっぷりとしたブレスでフレーズを上手く繋ぐ。声は豊かで表現も劇的だけども、表情付けも細かく、大味な感じは一切受けません。
旋律と声に溺れる楽しみを存分に味わいました。
日本での知名度は?!
ところで彼は、今ではMETのライブビューイングでお馴染みのバリトンですが、商業録画・録音が殆どないようで、日本ではテレビ放送にかかる機会も殆どないせいか、実力者の割に日本での知名度は今ひとつな気がしました。。。
(実は彼、2014年松本での「ファルスタッフ」のタイトルロールだったんだけど、それを知ってる人って、今回の聴き手で一体どのぐらいいらしたのか。。。🧐)
ライブビューイングも限られた場所での上演で、足を運べる人の特権ですし、テレビもWOWOWという特殊なチャンネルでの放送となりますと、格段に知名度は下がるなぁと感じます。残念😢
これを機に、もっとケルシーの実力を知ってほしいなぁ。
医師グランヴィル役、河野鉄平さんの存在感
日本人歌手からは、お医者様グランヴィルの河野鉄平さんを激推ししたいです。
1月後半〜2月上旬にかけての、新国立劇場での「彷徨えるオランダ人」での脅威的なカヴァー
(カヴァーで5公演中4公演を歌い切るなんて、尋常では考えられない。。。)
はXで時系列を追っていた故、記憶に新しいです。
今回は文句なしにカッコ良かった!
日本人歌手でこんなに素晴らしい実力者がいらっしゃるとは、本当に嬉しいびっくりです。

日本人離れした身のこなしand外見に加えて、よく響く硬質の低音にうっとり🫶
歌は少ないけど、舞台に出て来られる度に双眼鏡で追ってました😅
夜会のシーンでもパーティ出席者として舞台におられ、ヴィオレッタがアルフレードに罵倒されて気を失ったところで、スッと手を差し伸べ、支える場面などは演技が細かくてため息😍
舞台さばきが他の日本人とは明らかに違っていたし、骨格とか輪郭がなんとなく私のご贔屓さんに似てて、声質も近くて好感度爆上がりでした。
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ところでケルシーと河野さんは20年来のご友人とのことで、なかなか良いツーショットが、インスタに上がっておりました。ほっこり♡

オペラ25年目にして初めて知った「椿姫」の意外なシーン
余談:
オペラを聴き始めて今年で25年になりますが「椿姫」の中に闘牛士が出てくることを、今回の舞台を通して初めて知りました笑🤭
2幕後半、夜会の場面冒頭の余興シーンです。闘牛のタペストリーがかかっていたので「カルメン」のパロディのつもりか⁉️と勘繰ったのですが、ジプシーのダンスの後にマタドールが出てきて、闘牛士がウンタラカンタラという歌詞も出ます。びっくりしました笑笑

ちなみに制作年数は「椿姫」が1853年、「カルメン」が1875年と、流石にヴェルディの方が先に作品化してます。
生で体感する価値あり!「椿姫」満足度Maxの京都公演
「ぶらあぼ」のレビュー

公演クリップ
キャスト
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXXI
ヴェルディ:歌劇《椿姫》[全3幕]新制作〈原語(イタリア語)上演/日本語&英語字幕付〉
◎京都公演
2025.3/14(金)15:00@ロームシアター京都 メインホール
ヴィオレッタ・ヴァレリー:ニーナ・ミナシアン
アルフレード・ジェルモン:カン・ワン
ジョルジョ・ジェルモン:クイン・ケルシー
フローラ:メーガン・マリノ
アンニーナ:牧野真由美
ガストン:マーティン・バカリ
ドゥフォール男爵:井出壮志朗
ドビニー侯爵:町英和
医師グランヴィル:河野鉄平
小澤征爾音楽塾創設者/永久音楽監督:小澤征爾
小澤征爾音楽塾副塾長:原田禎夫
アシスティング・ディレクター 小澤征良
指揮:ディエゴ・マテウス(小澤征爾音楽塾首席指揮者)
演出:デイヴィッド・ニース
装置・衣裳:ロバート・パージオーラ
照明:イー・ツァオ
合唱指揮 ドナルド・パルンボ
管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ
合唱:小澤征爾音楽塾合唱団
コメント
コメント一覧 (2件)
趣味の合うご夫婦で素敵だなぁと感じました…
知識のない私にも楽しさが伝わってきました^^
素敵な記事をありがとうございました!
egumiさん、いらっしゃいませ!
ブログにコメント頂くのは何年振りだろう(笑)嬉しいです。ありがとうございます!!
オペラの実演を観る機会はめっきり減りましたが、今回は本当に、思い切って行ってみてよかったです。
近大司書のことやら、日常のことを書いていきますのでまたいらしてくださいね。お待ちしてます(^^/