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190820-22-24 エフゲニー・オネーギン@まつもと市民芸術館 その4ファビオ・ルイージの「オネーギン」その他編

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「爆音、ロマンティックの極み」

ファビオ・ルイージが松本でオネーギンを振るというニュースが流れたのはちょうど今から一年くらい前。誰が歌うにしても1公演は行くつもりでした。

私がルイージを初めて聴いたのは、2004年夏、初めて行ったベルリン国立歌劇場での「ドン・カルロ」
鋭利な刃物で切り裂くような鋭さでオケを自在に操るその手腕と、機能的なシュターツカペレ・ベルリンに一気に引き込まれ
「世界のトップクラスの演奏ってこういうものなんだ・・」と肌で感じた貴重な時間でした。
あの時の体験こそが、私をベルリンに何度も引き寄せ、その過程の中でヴィノグラドフとも出会えたのです。(彼に出会ったのはその半年後、2004年の年末、同じベルリン国立歌劇場での「魔笛」ザラストロ)

その後ルイージは度々来日していると知ったのですが、実演にはなかなかタイミングが合わず、やっと久しぶりに聴けたのは一昨年夏の横浜での読響との「ドン・ファン」「熊」「英雄の生涯」
https://valencienne-tea.com/170825-luisi
そして今年春の西宮でのデンマーク国立との「ベートーベン7番」

これらの体験やMETのライブビューイングでの映像の印象から、テンポ早めでサクッと進み、尚且つロシアローカル色は希薄でインターナショナルな感じになるのかな?と予想していました。

しかしいざ演奏が始まってみると、かなりの爆音でびっくりしたこと(^^; 回が進むにつれ、段々と落ち着いてきたので最終日が一番バランスがよかったと思うんですが、時に歌手の声がオケの音に埋もれることもあったりで、容赦無く鳴らしてましたねえ。
全体的にゆったり、ロマンティックの極みとも言える演奏でしたが、特に各人のアリアでのたっぷり感には驚きました。

但しこれが裏目に出て(少なくとも私はそう感じていて)
実は毎回眠くなってしまったアリアもあったり・・ええと、これだけ長々と色々書きなぐっているのに、これまで殆ど話題に出してなかったレンスキーとオリガ、それとオケの音に紛れてしまったラーリナ夫人の絡む場面では、なんとなくもにょもにょ感がありました。
あのゆったりとしたテンポ感をちゃんと嗅ぎ分け、理解して歌ってたのはタチアーナとグレーミン、そして乳母のネイティブ歌手だったと思います。

レンスキーとオリガは演技的には良かったと思います。
特に1幕のオリガとレンスキーのイチャイチャぶりが微笑ましくって!
熱く語るレンスキーの言葉なんかそっちのけで、オリガがケーキを食べる手を止めないので「あーもう!」みたいな感じでスプーンでジャムをすくって一口彼女に食べさせて黙らせ(笑)ジャムを彼女の側から遠ざけて自分の書いた詩を読ませようと紙を握らせる。今更のようにオリガは「いや〜ん、これ私のこと!?」的に嬉しがってレンスキーのアリアが終わるとベタベタチューの嵐で(^_^;)
二回目は客席まで音が聞こえるくらい、ちゅーしまくってたのが印象的だったんですが、最終日はそこまで激しくなかったですw

アメリカーン!なイメージのオリガは初日はもう少し慎ましくても…と感じたんですが、二回目はなんか可愛く見えました笑笑
ボリューミィな方なので「丸い月のようなオリガ」のイメージにも合ってると思います。タチアーナが楚々としてるので対比はうまくついてるなと。

声的にはもう少し低いと尚いいな、とか、もう少し踏み込んだところが欲しいな、と思ったこのカップルですが、2幕の決定的別れのシーン「ウラジーミル、落ち着いて!」「ああオリガ、永遠にさようなら!」の場面は、特にオリガはもう最後の出番ということもあってか、声がひっくり返るぐらいの勢いのある歌唱で、刺さりました。

オリガは原作では、死期を悟ったレンスキーが「君だけは忘れないで欲しい」と懇願していたにも関わらず、あっさり他の人と結婚する・・・という、薄情とも取れる女性ですが、それはアリだと思います。
自分のことを芯から愛してくれる男をちょっとからかう意味で、他の男に色目を使い、結果的にそれが愛する男を死に至らしめるた原因を作ったような愚かさを持っているけれど、でもそんな愚かさが可愛い。

女って男が期待しているほどには前の男のことは、引きずらないものです。過去にどんなに自分を愛してくれた男がいたとしても、今、目の前に自分を愛してくれる男がいれば、そっちになびくもの(笑)
だからと言って、過去の愛がまやかしだったわけじゃない。その時はそれが全てだったんだし、レンスキーを愛していたことに嘘はないわけで。
そういうことをあの短いやり取りだけの間で瞬時に想起させた・・・それだけでも、あのオリガの捨て身の歌唱には意味があったと思います。

ルイージの指揮が、まるで「ドン・カルロ」のようだった・・というご意見も拝読しましたが、確かに爆音で鳴らしていたところも多々あれど、私はそうは感じませんでした。過去のベルリンでの鋭利な刃物で切り裂くような「ドン・カルロ」とは全くアプローチが違いましたもの。

確かにロシアの手触りは若干薄まったかと思いますが、とにかくロマンティック。布の上で水滴が転がるような、そんなイメージ。
爆音から、劇場でなければ聴くことが不可能であろう弱音に至るまで、これがファビオ・ルイージの「オネーギン」だ・・!と、強い説得力を持って示してくださったと思います。

今、一番好きなオネーギンの演奏は?と聞かれたら、迷わずこの時の松本のオネーギンだと断言できます(グレーミンのことを抜きにしてもね!)

そういう意味でも、この演奏が録音も録画もなされていないのが、本当に悔しくて。
公演から約1ヶ月が経過しようとしてますが、日ごとにその悔しさは増すばかりです(笑)

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■チャイコフスキー:オペラ《エフゲニー・オネーギン》

2019年8月20日(火)開演 18:30、22日(木)開演 15:00、24日(土)開演 15:00(約3時間、休憩1回あり)
まつもと市民芸術館・主ホール

セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」2019年8月20日、22日、24日

セイジ・オザワ 松本フェスティバル
●指揮:ファビオ・ルイージ
●演出:ロバート・カーセン
●出演
エフゲニー・オネーギン:レヴァント・バキルチ (20日、22日は大西宇宙)
タチヤーナ:アンナ・ネチャーエヴァ
レンスキー:パオロ・ファナーレ
オリガ:リンゼイ・アンマン
グレーミン公爵:アレクサンダー・ヴィノグラドフ
ラーリナ夫人:ドリス・ランプレヒト
フィリーピエヴナ:ラリッサ・ディアトコーヴァ
トリケ:キース・ジェイムソン
隊長、ザレツキー:デイヴィッド・ソアー
合唱:東京オペラシンガーズ
ダンサー:東京シティ・バレエ団
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ

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