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追悼:テオ・アダム(Theo Adam :1926.8.1-2019.1.10)

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追悼:テオ・アダム(Theo Adam :1926.8.1-2019.1.10)

年明け早々に悲しいニュースが・・
ドイツ人バス・バリトンのテオ・アダム氏が1月10日、故郷ドレスデンで亡くなったとのこと。
享年92歳でした。

アダムは、20年近く前にオペラを聴き始めた入門段階から録音に親しんだ、大好きなバスバリトンでした。
格調高い響き、ドイツ語の美しさ、驚異的な音域・・

音だけでも充分に引き込まれたのですが、暫くしてから、当時親しくして頂いていた同好の方から、1987年のベルリン国立歌劇場来日公演の「マイスタージンガー」の録画を頂き、それを観てから、アダムに対するそれまでのイメージが覆った感じがしました。

今回の訃報に際しての追悼ツイートにも、ザックスが良かった・・という方が多く、んーやっぱりそうなのか、と納得したと同時に
実は映像を見る前までは、アダムのザックスに対して
「いいんだけど、ちょっと知性が優った感じで、親方という役柄には少し違和感あるよなあ」
と思ってたことが脳裏をよぎりました。

私にとって、ヴォータンは唯一無二で代えが効かないけど
ザックスはいろんな解釈が可能なだけに、必ずしもアダムでなくてはならない・・というわけじゃないな、と。

でもあの映像を見て、初めて彼が「最高のザックス」と言われる所以がわかった気がしました。
大げさなことをしているわけじゃないのに、舞台を支配する力がすごい。ちゃんとザックスが存在している、という感じで。
歌手という枠を超えた、真の舞台人だと思いました。

幸い、今ではYTで当時の来日公演の映像と、80年のリンデンでの映像、2つのザックスを見ることができますし(演出も同じなので見比べるのも楽しい)

コンサートでの抜粋ですが、88年のゲヴァントハウスでの、少し声が衰え始めた感じですが
老年期に差し掛かった男の侘しさを、虚勢を張って全力で否定してる・・そういう憂えたザックスも、この人ならではの味わいかなと思います。

その他、「薔薇の騎士」のオックス男爵
これも、故郷ドレスデンでの映像が残ってます。85年。

R.シュトラウスでは「アリアドネ」の音楽教師(ケンペ盤)もありましたね。
モーツァルトでは、これも77年リンデン来日公演の「ドン・ジョヴァンニ」

「魔笛」のザラストロ(スイトナー盤)や「コジ」のアルフォンソ(スイトナー盤もいいんですが、78年ミュンヘンでのライブのサヴァリッシュ盤がキャスト的にも最高に好き)

そしてザックス以外のワーグナーは、何と言ってもヴォータン。ベーム盤での「ザ・神!!!」な歌唱は、恐らくワーグナーが生でアダムのヴォータンを聴いたら「これぞ!!」と驚嘆したんではないかなと思ってます。
ヴォータンだけは、私にとっては本当に代えが効かなくて^^;未だに実演で「ライン」「ワルキューレ」を聴いていない理由の一つにもなってます。

オランダ人(クレンペラー盤)「ローエングリン」のハインリヒ王(54年のヨッフム盤でのわっかーい王様が素敵)
そして「パルジファル」では、54年バイロイトで第二の聖杯騎士&ティトゥレルを同時に歌い、75年のケーゲル盤CDでアンフォルタス、78年にはグルネマンツ(H.シュタイン指揮)と、実に4役歌っているという・・・
(厳密に言うと「マイスタージンガー」でも、若い頃には親方衆の一人、そしてポーグナー親方→ザックス・・と3役歌ってるけど)

アンフォルタスとグルネマンツを両方歌った歌手は(しかもそのどちらもが、超一級の歌唱と・・・)他には思い当たらない・・(私が知らないだけかもしれませんが)

それと非ドイツオペラの分野でも活躍なさってました。独語での「ボリス」(ケーゲル盤抜粋)やドン・カルロのフィリッポ(これも独語)は、一聴の価値があると思います。本筋ではない・・とは思うけど、独特の説得力を持って、胸に迫ってきます。

最後の舞台は、2006年12月。故郷ドレスデンでの「魔弾の射手」隠者役でした。子供時代はドレスデン聖十字架教会で歌っていらっしゃいましたし、80歳までお元気で舞台に立たれていたのですから、実に70年以上の歌手人生だったのですね。。。
引退舞台の際の、素敵な笑顔・・

近年はドレスデンのケアホームに入居なさっており、そちらで最期を迎えたとのこと。穏やかな余生を送っていらっしゃったのだと信じたいです。

私にとっては、バス歌手の父のような存在であったアダムさん。

オペラや歌曲に関して、たくさんのことを教えてくれた録音・録画はこれからも色褪せることはないでしょうし、これからもずっと聴き継いで行きます。

アダムさん、どうぞ天国で安らかに・・・合掌🙏

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ベルリンKultur-Radioでの追悼番組(抜粋)

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